第132回芥川賞は阿部和重さんが受賞! (平成16年度下半期) | ||||||||||||||
第132回芥川龍之介賞の選考委員会が1月13日(木)午後5時から築地・新喜楽で開かれ、以下の候補作品の中から阿部和重さんの「グランド・フィナーレ」が受賞作に決まりました。なお、芥川賞の贈呈式は2月18日に東京会館で行われます。
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《 単行本 》 『 シンセミア(上) 』 阿部 和重 ![]() 朝日新聞社(2003/10/17) 通常24時間以内に発送 【阿部和重の美少女教育】★★★★★ 阿部和重の美少女教育 「ニッポニア・ニッポン」、「シンセミア」、「グランド・フィナーレ」と、つづけてみてくると、阿部和重のロリータ・コンプレックスがジグザグにスパークしていくことに気づく。ふりかえれば、「インディヴィジュアル・プロジェクション」ですでに、仕事場にときどき遊びにくるモギリのオバハンの娘の小悪魔ぶりが顔をのぞかせていた。ぼくは個人的に彼の趣味判断に賛成だが、その政治的選択をつかみあぐねている。あんまりアモラルだから。とはいえ、ただのロリコンになりはてて破滅するには早すぎる。それならば阿部は、一体ぜんたい、何をたくらんでいるのか? ぼくはおもった。今後、阿部和重は、彼なりのやり方で「美少女教育」にむかうのかもしれない、と。「文学の終焉」を嘆いてみせる猿芝居をここで上演する教養も神経もないし要らないが、それにしたって嫁入り前のだいじなだいじな女の子たちの読み物にはほんとうにろくなものがないではないか。「細雪」のようなものは現在絶無なのだ。ただし今後どうかわらんぜ。この推論があたっていれば、次回作は、お嬢様学校のノーブルな娘さんたちが教師にバレないようにはにかみながら回し読みする啓蒙小説でなければつじつまが合わないことになる。 阿部和重に、オルタナティヴな「恋愛レボリューション21」(モーニング娘。)が描けるだろうか。「つんく党独裁」を阻止できるだろうか。 【カタルシス不発】★★★ 因縁や人々が絡み合って事件が事件を呼び、憶測が飛び交い 真相は闇の中という現実社会。権力や腐敗や個人の恨みや愛情。 それらすべての要素が小さな神町にぎゅーっと高濃度に濃縮 されてしまったかのような事件の続発ぶり。 展開が気になって気になって一気に読むは読んだのですが・・ これほど登場人物の誰にも感情移入できない小説も珍しいと思いま 私はこの本の舞台であり、阿部先生の故郷でもある「山形県東根市神町」にごくごく近いところに住んでます。つまり、この小説の中で若者の溜まり場と化してるボーリング場にはよく行くし、彩香の行ったジャスコ2階の書籍コーナーではよく本を買う...というふうに神町周辺の地理には詳しいんです。 このへんの人たちは、神町というと自衛隊の街というイメージを持っています。ほんと、それだけ。 それなのにあの神町が、あの神町が、ここまで次々といろんな事件や災難に見舞われるとはまるで地獄絵図を見るような気持ちで読みました。えっ~、マジでこれが神町かよっ!?と。 神町に住んでる人はこれを読んでどう感じるんだろう。 いい気分はしないんじゃないかなー。 ここまで故郷をめちゃくちゃに描く阿部和重の意図はいったい何なんでしょ?ゆがんだ愛情なのでしょうか....。 《 文庫 》 『 ニッポニアニッポン 』 阿部 和重 ![]() 新潮社(2004/07) 通常24時間以内に発送 【物語の終わりと小説の終わりを二度楽しむ】★★★★★ 「ニッポニア・ニッポン問題の最終解決」計画を構想する内省的な前半と、それを実行に移す過程を描く、「物語」的な後半で読み応えが違ってくる。 後半は、「なぞとき」(といっても推理小説的なものではない)的な展開が多い著者の作品の中ではちょっと珍しいかなという感想。ここでは「映画」の「シーン」を描いている気がするし、そうならば「物語」の結末としては納得。 ただし、「小説」の終わり方としては、「インディビジュアル・プロジェクション」同様、「物語」への肩透かしを食らわせてくるので要注意(そんなおおげさじゃないですけど)。 あ、あと、この文庫本には、斎藤環先生(精神科医:存じ上げないのですが)のあとがきで本の表紙、登場人物の名前に関する解説をしてくれている。思わず、「ヘー」と思えるネタである。 《 文庫 》 『 アメリカの夜 』 阿部 和重 ![]() 講談社(2001/01) 通常24時間以内に発送 【感動的な青春小説】★★★★ ~映画や小説を巡る物語にまみれて生きている「私」が、自ら語り出そうとするときに遭遇する過酷な失語の状態から、いびつで無軌道な「小説(映画)」が生成する瞬間を描く。意識的かつ真摯な「小説論」であり「教養小説」。といって語り口は不真面目でさえあります。「気狂いピエロ」+ブルース・リーという目眩がするようなアクションシーンで、道化を演じてみ~~せる余裕もかっこいい。映画や小説に浸かった青春を送った人は読んでいて胸に痛いところがあるかも。~ 【90年代】★★ 名前と著書名くらいしか知らない作家でしたので、実際にとりあえず読んでみました。デビュー作ということなので、これ以後の小説では改善されているのかもしれませんが、ぼくにとっては読むことが楽しくありませんでしたし、何より辛かったです。 理由は単純なのです、リズムが悪いんです。それは作家が故意にしていることなのかもしれませんが、いずれにしても全く駄目です。 なるほど、先行テクストからの様々な引用、核心を回避し続ける語り口・・・。この小説の魅力のひとつが、そうした現代小説的な意匠であることは確かだ。しかし、真に重要なことはそこにあるのではない。見る「私」と見られる「私」の乖離、そこに導入される「鏡」という小道具。そしてまた小説の基調をなす「光」と「闇」の対比・・・。それらの古典的とも言える小説技法を衒いなく用いたという選択にこそ、この小説における阿部和重の最大の賭けがある。そして、この彼の反時代的な大胆さこそが、「アメリカの夜」という小説を非常に格調の高いものにしているのだ。 《 文庫 》 『 インディヴィジュアル・プロジェクション 』 阿部 和重 ![]() 新潮社(2000/06) 通常2日間以内に発送 【払った金の元は取れるよね】★★★ 出来映えのいい作品ではあるが、残念なことに何度も読みたいという作品ではない。きっちりとまとまっているし、抑えるべきところは抑えている。不快感を与えるような欠陥もない。ただし、それだけ。時間と金を費やすだけのクオリティーはあるものの、運命的な出会いを感じさせるような作品ではない。過大な期待を持って読むと失望する可能性あり。 【阿部和重さんの小説を初めて読みました。】★★★ この『インディヴィジュアル・プロジェクション』の文体は、変わっているけどとても読み易かったです。 登場人物は、記号的に書かれています。これは人物の書き込みが薄い為に記号的な人物描写になったのではなく、作者が意図して記号的な人物を書こうとしている事が伝わります。しかし、サカタさんと娘のアヤコの描写は実際にこんな人物がいそうなリアリティが有ります。 物語は日記形式で書かれていて、主軸のストーリーに関係の無いエピソードが多いし、結末は読者に分かり易い答えを提示している訳ではないので、『インディヴィジュアル・プロジェクション』の世界観にハマルのでなければ、面白くないかも知れない。『インディヴィジュアル・プロジェクション』は文体と構成が巧く、押しつけがましくないので、「この世界は暴力と不条理に満ちている。だからお前は強くなれ」という主題が、ちゃんとこちらにも伝わってきます。常盤響さんの装幀は格好良いのですが、単行本の装幀を縮小しているだけので、がっかりしました。(写真や文字が途中で切れていたり、写真数が減らされていたり)。完全に単行本の装幀を再現するのが無理なら、文庫本専用の装幀にして欲しいです。 装幀と、読後感が悪いので(誉め言葉です)二度と読み返したくならないので、★★★。 東浩紀氏の解説は、理解出来るのか理解出来ないのか。 まずは「作品」にどっぷり使って読んでいくのが楽しい。「え!なんなの」って。 《 単行本 》 『 シンセミア(下) 』 阿部 和重 ![]() 朝日新聞社(2003/10/17) 通常24時間以内に発送 【困惑してしまいます】★ ~小さな町の住人達の濃密で複雑な人間関係が、これでもか、という程濃厚に描かれていて、読んでいる間息苦しくなってしまいました。 たくさんの登場人物がいるのですが、誰もが見事なまでに小心な悪意の持ち主として存在し、誰一人として感情移入できないまま、終わってしまいました。 前評判の高い作品だったので、期待をこめて読み始めたのですが、上下2~~冊は正直きつかったです。~ 【『万延元年のフットボール』を彷彿とさせる傑作】★★★★★ 阿部和重自身も仄めかしているように、彼は現代日本文学の最良の後継者としてその頭角を現している。 『インディヴィジュアル・プロジェクション』においては村上春樹と村上龍の「あいだ」で書き、この『シンセミア』においては大江健三郎と中上健次の「あいだ」で書いている。特に地方を舞台とし、現在と過去が微妙に交錯しつつ圧倒的な結末へとなだれ込んでゆく物語構造は大江の『万延元年のフットボール』を彷彿とさせる。ただしその細部のアイテムは徹底的にサブカル志向である。 《 単行本 》 『 アメリカの夜 』 阿部 和重 ![]() 講談社(1994/07) 通常4~6週間以内に発送 【感動的な青春小説】★★★★ ~映画や小説を巡る物語にまみれて生きている「私」が、自ら語り出そうとするときに遭遇する過酷な失語の状態から、いびつで無軌道な「小説(映画)」が生成する瞬間を描く。意識的かつ真摯な「小説論」であり「教養小説」。といって語り口は不真面目でさえあります。「気狂いピエロ」+ブルース・リーという目眩がするようなアクションシーンで、道化を演じてみ~~せる余裕もかっこいい。映画や小説に浸かった青春を送った人は読んでいて胸に痛いところがあるかも。~ 【90年代】★★ 名前と著書名くらいしか知らない作家でしたので、実際にとりあえず読んでみました。デビュー作ということなので、これ以後の小説では改善されているのかもしれませんが、ぼくにとっては読むことが楽しくありませんでしたし、何より辛かったです。 理由は単純なのです、リズムが悪いんです。それは作家が故意にしていることなのかもしれませんが、いずれにしても全く駄目です。 なるほど、先行テクストからの様々な引用、核心を回避し続ける語り口・・・。この小説の魅力のひとつが、そうした現代小説的な意匠であることは確かだ。しかし、真に重要なことはそこにあるのではない。見る「私」と見られる「私」の乖離、そこに導入される「鏡」という小道具。そしてまた小説の基調をなす「光」と「闇」の対比・・・。それらの古典的とも言える小説技法を衒いなく用いたという選択にこそ、この小説における阿部和重の最大の賭けがある。そして、この彼の反時代的な大胆さこそが、「アメリカの夜」という小説を非常に格調の高いものにしているのだ。 《 文庫 》 『 ABC戦争―plus 2 stories 』 阿部 和重 ![]() 新潮社(2002/05) 通常3日間以内に発送 【陰惨】★★ 「アメリカの夜」において、作者は、迂回しつづける文体を使用しつつ、あくまでもバカバカしいストーリーを語っていた。そして、その食い合わせにこそ魅力があったのであって、工夫の感じられない退屈な展開を、このハスミ文体でやられると、あまりにも陰惨だ。 似たものリンク 《 単行本 》 『 現代語訳 樋口一葉「十三夜 他」 』 樋口 一葉,藤沢 周,阿部 和重,篠原 一 ![]() 河出書房新社(1997/03) 通常2日間以内に発送 【最高にクール。最高にスマート。これが女。】★★★★★ 潔くってすがすがしい。ワガママだけど、腐ってない。なんとも「男前」な作風。女流作家の作品というと、ドロドロ、ウジウジ、情念渦巻く愛憎劇を想像してしまうけれど、一葉は本当にクール!!要るか要らないか、マルかペケか、0か100か。登場する女もクールなら、展開もクール、終わり方もクール。残酷なほど、冷たい。でも、コレが女の本性ですよ。ところで、まさか樋口一葉を藤沢周や篠原一が訳すなんて、だれも考えつかなかった。でもこれは正解。原典に忠実かどうか、時代考証がどうの、という問題ではないのだ。いつまでも男性至上的で保守的な当時の社会をまるで小バカにしたような最高にクールでスマートな一葉の作品を、いま同じ感覚で読みなおすためには、同じようにクールで新人類的センスを持った若い才能が必要なのだから。 似たものリンク 《 単行本 》 『 青山真治と阿部和重と中原昌也のシネコン! 』 青山 真治,中原 昌也,阿部 和重 ![]() リトルモア(2004/06) 通常2日間以内に発送 【3人のルーツ】★★★★★ ジョン・カーペンター、モンテ・ヘルマン、デヴィッド・クローネンバーグ、ジェス・フランコ、ブライアン・デ・パルマといったなかなか評価されにくい5人の監督に対するそれぞれの想いや思い出が交わされる前半と、3人の中から一対一の対談を収めた後半といった構成。 映画評論のような格調高いものでは無いので気楽に読めます。 それぞれのルーツも垣間見れ、青山真治の深層心理も?知ることが出来る一冊。 似たものリンク 《 文庫 》 『 無情の世界 』 阿部 和重 ![]() 新潮社(2003/02) 通常2日間以内に発送 【どの作品もまともではありません】★★★ ~三つの短編が収められた本である。それぞれの評価を記すと、 トライアングルズ:星二つ 無情の世界:星四つ 鏖(みなごろし):星三つ半 というところです。 どの作品もまともではありません。それなりに楽しめますが、読み終わると精神的にどっと疲れてしまうような作品ばかりですので、自分をごく普通の人と考えている人には、深夜に読むことをおす~~すめしません。 「トライアングルズ」は気が向いたら読んでください。大人子供(小学校六年生)が語り部の、どこまでも訳が分からない作品です。 阿部和重さんのストーリーテリングは非常に上~~手いのだが(特にどの短編も出だしは極上)、どれを読んでも短編にこそぴったりで、長編にはとても向かないのではないか、と感じました。(ほっとするところがない) 100頁をこえたら多分読み手の心も病んできて、とてもそれ以上読むに耐えないようにおもいます。(これは褒め言葉です) でも、彼の小説を好きなひとは本当に好きなんだろうな、とおもいま~~した。~ 【映像化希望!】★★★★★ 表題作「無情の世界」を含む三作品が収録させている。お勧めなのは、「鏖(みなごろし)」である。大馬鹿者が超レアな腕時計を万引きする。しかも命がけで。先の読めない展開が飽きさせない。読んでいると頭の中で映像が動き出す。 妄想万歳!アメリカ万歳! 【無情の世界】★★★ まさに 無情の世界 です。読みやすいです。この人の作品は、文章を読んで情景が浮かんでくるというのではなく、映像にしたらおもしろそうだなというか、映像になりやすいな、みたいな感覚です。やっぱり映画学校卒業してるからなんでしょうかね。 似たものリンク 【反時代的精神の作家】★★★★★ 「アメリカの夜」で阿部和重は、「延々と循環を繰り返す自意識」という古典的、「文学的」なテーマに敢えて取り組んでみせた。既製の「文学」を革新した現代小説として評価されがちな「アメリカの夜」だが、この作品は極めて真っ当な近代小説として評価されるべきではないか。 似たものリンク 似たものリンク 【まずは素直に楽しむのが良いのでは】★★★★ 小説を読んで「考えさせられる」ことは多いと思うが、この作品ではその考えさせるポイントが非常に「著者」に近いところにある。 「著者」⇒「作品」⇒「読者」というより「著者(作品)」⇒「読者」って感じ。 読んでいるときは、「作品(著者)」⇒「読者」の感じなんだけど。 似たものリンク 【反時代的精神の作家】★★★★★ 「アメリカの夜」で阿部和重は、「延々と循環を繰り返す自意識」という古典的、「文学的」なテーマに敢えて取り組んでみせた。既製の「文学」を革新した現代小説として評価されがちな「アメリカの夜」だが、この作品は極めて真っ当な近代小説として評価されるべきではないか。 似たものリンク 似たものリンク 【地元民は困惑してるだろうなぁ】★★★ 待ちに待った阿部和重の新作。 しかもこれまでなかったほどの長編である。 似たものリンク |
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